専門家が解説!!知っておくべき犬のチョークチェーンのメリット・デメリット

しつけ方法

チョークチェーンと聞いてどんなイメージを持ちますか?
犬が可哀想、危険、虐待、プロしか使えないなど、ネガティブイメージばかりではないでしょうか。

インターネットや本で犬のしつけ方法を調べても、出てくるのはフードを用いた方法ばかりで、実際にチョークチェーンによるしつけ方法の情報はほとんど見当たりません。

今回はフードを用いた陽性強化と、チョークチェーンのしつけ方の両方を学んだドッグトレーナーの観点から、チョークチェーンのメリット・デメリットについて解説します。

ラブラドールレトリーバー犬

そもそも完璧なしつけ方法はない

しつけの本に書いてあることがバラバラで何を信じたら良いかわからない。でもそれは実は当たり前なんです。人でも生まれや、育った環境、各個人の性格に適した教育方法が違うように、犬にも“しつけ方法”に向き不向きがあります。

またしつけ方法を選ぶ際に犬の気質以外に気にするポイントがあります。それは飼い主側の状況です。生活サイクルの違いにより犬と関われる時間もまちまちですし、住環境や家族構成によっては犬の問題行動を一刻も早く直さないとならない場合もあります。

どのようなしつけ方法でも一長一短があり、個々の飼い主の状況と犬の気質の違いにより最適なしつけはことなります。固定観念にとらわれることなく、冷静に問題解決の方法を検討するのが重要となります。

チョークチェーン使用のメリット

マテを教えやすい

お手やおすわり、ふせはできるのに興奮すると手が付けられない。多くの方の頭を悩ませているのが犬が興奮した際の対応です。犬が興奮した時に有効なしつけは“マテ”をしっかりと習得することです。

多くの本で紹介されている“マテ”を教える方法は“オペラント条件付け”と呼ばれるものです。フードを用いるこの方法は、いわば犬の自主性を尊重するしつけです。言い換えると犬は自身の行動に対して選択の自由を持っています。

対してチョークチェーンなど、リードコントロールで犬をしつけていく場合、犬に他の行動をする選択肢を与えることはしません。余計な行動をとらせない分、学習にかかる時間は短くてすみます。具体的にどのような違いがあるかを解説します。

〜オペラント条件付けの場合〜

犬が座った状態で矢継ぎ早にフードを与え続けます。犬は座って状態で動かない限り、フードを食べ続けることが出来ます。そのため、犬はその場に座った状態で動かなければ良いこと(フードが食べられる)があると学習していきます。

その後人が徐々に犬との距離を取っていき、立ち上がりそうになったら再びフードを与えてその場に留まるようにします。

しかしこの方法では犬の行動は制約されていないので、座る姿勢を崩して立ちあがる、その場に伏せる、そして他の興味があるところへ行くことも自由です。このように犬の選択肢は複数あります。

また動物行動学では、犬は体験したことを学習するとされています。座れの指示をかけた後に他の行動起こすことが可能だと学習した犬に対して“マテ”を教えるには時間と手間がかかります。

〜チョークチェーンなどのリードコントロールの場合〜

リードで“マテ”を教える場合、まず座らせてから“マテ”の指示をかけます。ポイントは犬が動きそうになった瞬間にリードを上方に吊り、犬が座っている姿勢を保持させることです。
常にリードを上方に吊っていると犬が苦しいので、姿勢を保持している間はリードの張りを緩めています。大切なのは動こうとした瞬間のみリードに力を加えることです。慣れてきたら徐々に犬と飼い主の距離や、その場に留まる時間を長くしていきます。

この方法では犬に“その場に座れの姿勢のまま留まる”という行動しか選択肢はありません。そのため他の行動の選択肢がない分、早く“マテ”を学習することができます。

飼い主自身がご褒美となる
犬と飼い主

チョークチェーンなどを用いたリードコントロールで犬をしつける場合、必ず犬のストレスを緩和させるために体を触って褒めるようにします。犬に指示ばかり出していると、犬自身もあまり楽しくなくなります。リードコントロールで大切なのは、犬が飼い主の望む行動を取った際に最大限褒めてあげることです。

また“体を触りながら褒める”ことこそ、リードコントロールによるしつけの最大の効用です。犬の体じゅうを触ることで、犬との個別なキズナが生まれやすく、自由に体を触らせるトレーニングにもなります。また飼い主の手や褒める声が、犬にとってのご褒美となる効果もあります。

犬との信頼関係が生まれやすい

チョークチェーンは犬との関係性が破綻する。このような説が一般に浸透していますが、前述した通り破綻するかどうかは使い方によります。ではフードを用いた陽性強化の方法はどうかというと、使い方を誤っても関係性の破綻はありません。

ただし徐々にフードをあげる回数を減らしていき、飼い主の声や愛撫をご褒美となるように仕向けて行かないと、フードがないと指示をきかない犬になってしまいます。

フードを用いる陽性強化のもう一つの弊害は、犬に個人として認識されづらいというものです。フードがないと指示をきかない犬というのは、つまり与えてくれるフードにしか関心がないということです。そこに“誰が”という考えはありません。極端な話、犬からしてみれば指示をきいてフードをもらえれば誰でも良いわけです。

チョークチェーンなどのリードコントロールでしつける場合、リードを持っている人間の上手い下手が如実にでます。下手であれば犬が不快に感じ、一緒にいることをイヤがる一方で、上手にリードコントロールできる人に対しては犬も喜んでついていきます。
リードコントロールは犬のストレスを緩和しながら行うため、体をさわりながら褒めるので犬からは“この人と一緒にいると心地よい”と個別で認識されるようになります

つまり“何をしたか”よりも“誰がしたか”の方が重要になっています。
そのため犬が個人を認識しやすく、信頼関係を個別で構築しやすくなります。

チョークチェーン使用のデメリット

正しく使わないと効果が出ず、むしろマイナスな影響を及ぼす
ダックスフンド犬

チョークチェーンの最大のデメリットはその使い方にコツが必要だといういことです。ただつければ良いというしろものではありません。

フードを使う陽性強化の良いところは仮にフードをあげるタイミングを失敗したとしても犬と飼い主の関係性が壊れることはありません。

しかしチョークチェーンでしつける場合、失敗を繰り返すと関係性は破綻します。多くの本で素人におすすめしない理由はまさにこれです。使い方を全く知らない素人が独学でしつける道具としてはリスクが高いです。

教えるドッグトレーナーの技術にバラつきがある

チョークチェーンの習熟にはドッグトレーナー内でバラつきがあります。上手い人ほどタイミングや力加減を工夫して犬に負担をかけませんし、ストレスを緩和させるためにしっかり褒めることを欠かしません。逆に下手な人は力まかせに使用したりして、不用意にチェーンをチャリチャリ鳴らし過ぎて犬に不快感を与えてしまいます。

また習熟したドッグトレーナーは犬の気質に合わせて、道具を選びます。完全に締まるフルチョークにするのか、途中で締まるのがとまるハーフチョークにするのか。犬の興奮性や反応の良さをよく見ています。

ともかくドッグトレーナー選びに失敗しないためには、どのようなしつけを犬にしているかトレーニング風景を見て確認することです。
また飼い主自身がチョークチェーンの扱い方を覚える必要がありますので、扱い方を教えてくれるドッグトレーナーを選ぶことも大切です。

まとめ

いかがでしたでしょうか。今回はチョークチェーンのメリット・デメリットについて解説しました。チョークチェーンの使用に関しては賛否両論ありますが、適切に使用すればしつけの効果があがるのも事実です。
どのような方法であれ、大切なのは飼い主と犬が幸せにくらせるようにするのが本来のしつけの目的です。しつけ方法の選択の自由はあくまでも飼い主側にあり、その選択をする際の参考になれば嬉しいです。

犬 チョークチェーン