はじめに
犬の問題行動で最もやっかいなのが“噛む行為”です。
甘咬みくらいであれば目をつぶれるが、血が出るほどに本気で噛んでくるのであれば早急に対応が必要です。
今回は犬の本気嚙みについて解説すると共に、プロのドッグトレーナーが嚙み犬に対してどのように対処しているか紹介します。
なぜ犬はかみつくのか嚙みつくのか
噛みつく原因は個々のケースで様々ですが、おおまかに分けると下記のいずれかに起因するものがほとんどです。
ちなみに下記に列挙したものは“本気で噛んでくる成犬”を対象としたもので、子犬の甘噛みについては他の記事を参考になさってください
①遺伝性・先天性
この遺伝性・先天性の場合、もう元から噛む犬としか言いようがありません。
いくら優秀なドッグトレーナーでも生まれ持った犬の性格まで変えることは不可能です。
“氏か育ちか”という言葉がありますが、人を評するに生まれ持った資質か育った環境かどちらがその人に大きな影響を与えたかを論じることがあります。
人の場合はどちらが大きく影響したかなんて軽々しく決めることは出来ませんが、こと動物の世界においては生まれもった性格の方を重要視しています。
そのため心身ともに健康ではない犬を繁殖に用いることはせず、優良な性質をもつ犬を選択して交配させるのが通例です。
しかしながら人気のある犬種の乱繁殖や、近親交配などズサンなブリーディングで良質な犬がつくられていない現状が日本にはあります。
犬が噛む原因の全てをブリーディングのせいにすることは出来ませんが、儲かれば良しという風潮が遺伝性・先天的に噛む犬を生んでいることは、犬に興味がある方には知っておいてほしい事実です。
余談ですがヨーロッパで犬を入手する場合はブリーダー、もしくは保護犬のシェルターからだそうです。
どちらの入手方法もこれから飼うであろう、犬の性格や気質について事前に知ることが可能なのが特徴です。
“ペットショップで犬を飼うことがありえない“というヨーロッパの方の意見では「両親の出自もわからず、性格もわからない子を飼うのはギャンブルだよ」でした。
②防御本能
自分の身を守るために噛みつく防御本能に基づく場合の多くは、あらかじめ唸ったり歯をむき出しにしたり、近づいてくるなアピールをしています。他の特徴としては背中の毛が逆立っていたり、尻尾を振っていたりします。
よく誤解されるのですが、犬は喜んでいる以外にも尻尾を立てて振ることがあります。これは興奮しているサインで、噛みつく時にも尻尾を振るので安易に喜んでいると判断して犬に触ると痛い目をみるので注意が必要です。
また犬が何に対して身を守りたいのかは様々ですが、追い詰めらている分犬も容赦なく噛んでくるのでかなり危険な状態です。
経験則ですが防御面本能で噛む犬の性格は繊細でパニックになりやすく、気が弱い個体が多いように思います。
③攻撃本能
攻撃本能の場合、噛みつく理由はよりシンプルです。自分が気に入らない、やりたくないことに対して噛みつくことによって解決を計るのです。
これは元々の性格が気が強い個体に多く、さらに噛みつくことよって問題解決がなされた場合よりひどくなる傾向があります。
例えばブラッシングで足先を触られるのがイヤで噛みついてきたとします。その際見事に足先を触られるのを阻止することが出来たら、それが成功体験となり犬の噛む性質をより助長することになります。
またよく犬のしつけの本で犬に噛まれたら“痛い”と言って無視しましょうとありますが、噛んで自分の意思を通そうとする犬の場合は逆効果です。
むしろ噛まれても平然とした態度で、噛む攻撃は効かないということを示すことが必要です。
ボクシングなどでも、全然相手が痛がっていないと自分のパンチに自信がなくなってくるように犬に自信をつけさせないことが大切です。
本気噛みの解決方法
ではドッグトレーナーがどのようにして血が出るほどの本気噛みを対処しているかというと、ひたすらオビディエンストレーニングを犬にほどこします。
オビディエンストレーニングとは日本語訳で“服従訓練”です。
“服従訓練”は犬ではなく人が主導権を握り、何時いかなる時でも人間の指示を聞かせることがこのトレーニングの本質です。
そして犬を服従させるのに手荒な体罰は用いることはありません。犬を服従させるのに腕力は必要ありません。
ノーベル賞をとったコンラート・ローレンツいわく「犬はその人の印象によって言うことを聞くか決める」の通り、犬に対してその人がどれだけ迫力があるか、強い存在であるかを示すことが大切かを説いています。
ただ犬は人の心根を見透かすところがありますので、空威張りは全く通用しません。仮に犬が唸ったりしても動じず冷静に対処するような、人として胆力がある方が犬も言うことを聞きます。
特に攻撃的な犬に対して気持ちの部分で引いてしまうと、それを見透かしてバカにされてしまいます。
オビディエンストレーニング
オビディエンストレーニングの基本は犬が横について歩くリーダーウォークです。そして次に“座れ”と“ふせ”を覚えさせます。
特に“ふせ”が出来るようになることは重要です。基本的に犬はふせをするのを嫌がります。
なぜなら犬が立っていたり、座っている状態であれば何かあればすぐに動けますが、お腹をつけてふせていると動作がワンテンポ遅れてしまからです。
つまり犬が嫌がるふせをあえてさせることで、人側の優位性を示すことに役立つのです。
リーダーウォーク、すわれ、ふせが出来たら次にマズルコントロールを行います。
これは犬のマズルを後ろからつかみ上下左右に動かします。犬にとって口はとても重要で、そこに心理的な負荷をかけてコントロールすることで犬に我慢させることを覚えさせます。
簡単にトレーニング方法をご紹介しましたが、実際には厚手の革手袋をはめて怪我しないように準備をしたり、噛む要因(防御本能or攻撃本能)や犬の性格に応じて対応を変えたりしています。
まとめ
元も子もない話しですが血が出るほどの本気噛みの場合、一般の人に出来ることは無いと考えた方が賢明です。
その理由としては単純に本気で噛むの犬の対応はかなり難易度は高いからです。犬を扱う技術もさることながら、噛む犬と対峙するのは正直怖いものです。
手に負えないと感じたら経験の豊富なプロに相談をすることをおすすめします。ただドッグトレーナーや獣医師によって噛み犬を構成するプログラムが異なるので、複数のところに相談をして検討するようにして下さい。
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